事業報告

2020年度事業報告

 現在の日本は、Society5.0に向けた大変革期の入り口に立つとともに、東京一極集中がはらむリスクや地方の疲弊が限界を迎えた時代にあり、さらには新型コロナウイルス感染症の影響によるテレワークの拡大や政府機関、教育分野、医療分野等での強力なデジタル化の推進、異常気象等の災害に直面しています。こうした中、政府からは「Society5.0時代の持続可能な地域社会の構築」が総務省重点施策2020として発表されました。(1)若者たちの「生活環境を変えたい」という意識の変化やSociety5.0時代の技術を活かし、地方への人やモノの流れを創出すること、(2)ICTインフラの整備とともに5G・8K・AI等の技術を活かすことで、産業の高度化や新規産業の創出、多様な働き方の実現を図り、地域の就業の場、担い手、生活サービスを確保すること、(3)被害の最小化に資する防災インフラの整備、災害に対応できる人材の確保、インフラの適正管理の推進を通じて、安心して暮らせる地域づくりを推進すること等が謳われています。

 私ども通信建設業界は、そうした活動を支えるため、これまで培ってきた情報通信建設分野での総合力を発揮するとともに、社会生活や経済活動に不可欠な情報通信インフラの構築・整備・保守に取り組むことの重要性について認識を新たにしているところです。

 このような環境下において、協会並びに会員会社としては基軸である「技術力」「安全」「信頼」の観点でさらに競争力を強化し、自ら新しいビジネスチャンスを活かしていく必要があります。ICTを支える情報通信分野において、高速・大容量の無線局を支える光ファイバの整備や、5G等の無線基地局の整備が必要となり、その上で、地域課題を解決するためのローカル5Gや地域IX・CDNなどが整ってくることになります。

 そうした環境を活用して、頭脳としてのAI、筋肉としてのロボット、神経としてのIoTを使った新しいアイディアと豊富なリアルデータを活用した、個別化された製品やサービスが大きな付加価値を生み出すことに期待が高まっています。これからは様々なニーズに応えられるよう通信建設事業者としてビジネススタイルを変革していくことが新たなビジネスチャンスを創出することになります。すなわち、通信インフラの建設・開通工事という枠組みのみならず、設計から保守・運用まで仕事の幅を拡げ、更にはオフィスやお客様宅内のICT化をサポートするところまで一元的にサービスを提供できるよう技術力を高めて、通信事業者様へ提案していくフルアウトソーシングというスタイルへの変革が必要です。その受け皿となる高度な技術者育成への取り組みも含め、ビジネスチャンスを活かせるよう取り組んでまいりました。

 このような活動を展開するにあたっての競争力の柱としては、従来から取り組んでいる施工の安全確保や品質向上、エンジニアリング力の強化と業務の効率化・生産性向上、そして人材育成への取り組みが引き続き重要です。

 安全への取り組みについては、いかなる状況においても最優先すべき事項として取り組んでおりますが、事故発生件数は増加傾向であり、重量物落下、転落等の重大な人身事故が発生しています。通信事業者様とともにICT活用による新たな安全文化の創造という施策を掲げ、人身事故・設備事故を撲滅し、お客様に「安心・信頼」していただけるよう、安全・品質向上に継続的に取り組んでいます。具体的には、カメラを活用した安全の視える化、AIによる高所作業検知、ネットワークカメラやバイタル情報を活用した見守りなどの取り組みを始めています。また、従来どおり安全パトロールの強化並びに会員各社等での「安全の鉄則」に則った作業の徹底と安全作業手順書の更なる充実も進めているところです。安全は通信建設業界の要であり、その取り組みに終わりはありません。情報通信エンジニアリングのプロ集団としての更なる安全と施工技術並びに品質の向上を目指して活動を推進いたします。

 エンジニアリング力の強化の主要な取り組みとしては、時代に即応した業界全体での技術力向上を目的として、例年「光通信工事技能競技会」を開催しており、昨年は、東京オリンピック・パラリンピック等のイベント開催を考慮して、11月18日に京都パルスプラザで開催を予定していましたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴いご来賓、選手、関係者等の健康と安全を第一に考えて開催を見送りました。

 また、アクセス設備設計・積算におけるスキル向上と品質向上を目的として、東西エリア合同での「アクセスデザインコンテスト」については、オンラインでの開催に向けて検討しましたが、国からのテレワーク推進協力依頼や会員各社の選手選考等感染防止を考慮すると安全性確保が難しい上、条件不利地域における、地方公共団体、第三セクター法人、電気通信事業者が高速・大容量無線通信の前提となる光ファイバを整備する高度無線環境整備推進事業により、全国で大規模な光ファイバ整備工事が始まったことから、開催を断念しました。

 その他、日常業務を通じた創意工夫や改善をVE/VA活動として活性化し、水平展開するため、昨年は「つくばフォーラム2020 ONLINE」にオンラインで参加・展示を行いました。

 また、業務プロセスの見直し、安全施工への取り組みや工具・工法などの改善提案の優良事例を共有化し、更なる改善につなげるSKY(創造・改善・躍進)大会をWeb会議システム等活用して全国各地域で開催しました。

 事業を支える人材の育成については、4月7日に政府から「緊急事態宣言」が発出されたことから、新入社員研修等がオンラインで実施可能か検討し、数多くの研修をオンライン研修に変更して会員各社と連携して取り組みました。協会の研修センタでは、電気通信工事施工管理技士資格に対応した講座をはじめ、時代の進展にあわせた新サービス・新技術の研修への反映、保守業務の拡大ならびに過去からの設備維持に必要なレガシー技術継承に対応した研修の充実など、通信建設業界の総合力向上に向けたラインアップの整備を行いました。安全関連研修については、施工者から管理指導者向けまで経験年数に即した研修体系の見直しと研修内容の充実を図り、重点課題のひとつである転落・墜落防止対策についてはVRを導入し、より実感的な気づきを得られるよう工夫を重ねました。

 また、少子高齢化により生産年齢人口は、今後30年で30%減少すると見込まれており、社会基盤を支える通信建設業界においても、パートナー会社も含めた慢性的な人材不足と高齢化が課題になっています。電気通信設備工事においても、特定技能外国人を受け入れできる制度が始まっており、女性の活躍推進、シニア世代の活用、ICTを活用した生産性の向上等、様々な取り組みにより、安定した社会基盤を維持できるように、働き手の確保に努めてまいりました。

 技術の進展がめざましく、社会・経済情勢が急激に変化する中で、当協会と会員各社は、工事の安全はもとより、施工技術の向上や施工方法の改善・改良に積極的に取り組みながら、新たなビジネススタイルへの変革にチャレンジし、通信事業者様に信頼されるよう努めてまいりました。

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