ニュース/トピックス一覧

国際大会2連覇、金銀独占

~第39回技能五輪国際大会「情報ネットワーク施工競技」~

 静岡県沼津市で2007年11月14日から開催されていた、世界各国の若者が職能技能を競う「第39回技能五輪国際大会静岡大会」は21日閉幕し、前回のヘルシンキ大会からの新種目「情報ネットワーク施工」競技で、2005年、2006年と2年連続で国内大会優勝を果たし日本代表として出場した山口選手(協和エクシオ)が、世界を制して念願の金メダルを獲得するとともに、茂呂選手(日本コムシス。チャイニーズ・タイペイ代表)も銀メダルを獲得しました。

 山口選手は、前回のヘルシンキ大会(2005年)金メダリスト小湊選手(協和エクシオ)に続く「国際大会2連覇」という偉業を達成し、日本の2大会連続の金メダル獲得数首位の達成に大きく貢献しました。また、山口選手と茂呂選手による「情報ネットワーク施工」競技での「金・銀メダル独占」は、工事協会会員会社初の快挙です。

 「22歳以下」という年齢制限がある中で、会員会社の現場一線で活躍する若手技術者たちが、揃って、日頃の成果を十二分に発揮して、「国際大会2連覇」と「金・銀メダル独占」という偉業を達成したことにより、世界をリードする日本の光通信分野での優れた技術力と高い施工品質とともに、LANケーブル、同軸ケーブル、ツイストペアケーブルなどのメタルケーブルを駆使した構内情報配線分野での会員各社の高い技術力と高い施工品質を世界に強くアピールすることができました。

 このことは、日本の経済・社会活動を支える現場一線で日夜活躍している会員各社の技術者の皆様の大きな励みになるとともに、現場一線の技術力の向上と若手技術者の育成や技術伝承の強化に取り組んでいる関係者にも大きな勇気を与えてくれたものと思います。

 私たちは、現場一線で活躍する若手技術者たちが成し遂げてくれた「国際大会2連覇」と「金・銀独占」という偉業を大きく讃えるだけでなく、彼らが世界に強くアピールしてくれた高い技術力と高い施工品質という「大きな宝物」を大切にして、通信サービスをご利用されるお客様への安全で安心な信頼されるサービスの提供に向けて、引き続き、安全施工と施工品質の維持・向上に努めるとともに、発注者である通信事業者様からのご要請にこたえられるよう、日々の施工業務等をきっちりと確実に進めることが大切です。

 今後も、山口さん(協和エクシオ)と茂呂さん(日本コムシス)のより一層の躍進と、工事協会会員各社社員の皆様の光技術をはじめとする総合的な技術力が日本の通信インフラ設備づくりの一翼を大きく担うことが期待されます。

1.技能五輪国際大会と「情報ネットワーク施工」競技

(1) 第39回技能五輪国際大会

 技能五輪国際大会は、職業訓練の振興と技能水準の向上及び国際交流と親善を目的として、1950年(昭和25年)から始まりました。現在は、2年に1度、世界各地で開催され、各国・地域の予選会を勝ち抜いた22才以下の青年技能者が、技能を競い合う国際大会となっています。

 静岡県沼津市で開催された第39回技能五輪国際大会「静岡大会」は、48職種(表1参照)に、46カ国・地域813名の選手が出場、日本からは女性9名を含む過去最多の51名が出場しました。日本での開催は、1970年第19回東京(千葉)大会、1985年第28回大阪大会に続いて、22年ぶり3回目で、見学者数も過去最多の22万人を記録しました。

 日本は、金メダル16個を獲得、前回のヘルシンキ大会(2005年)に続き、2大会連続で金メダル数で首位に立ちました。また、金・銀・銅メダルを合計 24個(金16・銀5・銅3)獲得し、最も多かった東京大会(1970年)の記録に並びました。日本は、70年代始めまでは金メダル獲得数首位の常連でしたが、その後は韓国などに押され、前回大会で34年ぶりに金メダル数首位となりました。

 特に、機械、電子、情報通信などの職種で技術の高さを見せ、金属部品を手作りして小型工作機械を完成させる「ポリメカニクス」では8連覇、「CNC旋盤」では3連覇、前回大会からの新種目「情報ネットワーク施工」では2連覇を達成しました。

表1 第39回技能五輪国際大会 48職種の内訳

1.正式職種 38職種 ポリメカニクス、情報ネットワーク施工、製造チームチャレンジ、メカトロニクス、機械製図CAD、CNC旋盤、CNCフライス盤、情報技術、溶接、印刷、タイル張り、自動車板金、金属屋根葺き、配管、電子機器組立て、ウェブデザイン、電工、工場電気設備、れんが積み、石工、広告美術、家具、建具、建築大工、貴金属装身具、フラワー装飾、美容/理容、ビューティセラピー、洋裁、洋菓子製造、自動車工、西洋料理、レストランサービス、車体塗装、造園、冷凍技術、ITPCネットワークサポート、グラフィックデザイン
2.デモンストレーション職種 4職種 看護、移動式ロボット、抜き型、パン製造
3.ホストメンバー職種 5職種 機械組立て、構造物鉄工、木型、左官、曲げ板金
4.プレゼンテーション職種 1職種 アニメーター
(2)「情報ネットワーク施工」競技

 「情報ネットワーク施工」競技は、前回のヘルシンキ大会(2005年)から、次世代を担う種目として新設された競技です。

 競技課題は、各国エキスパートの協議により決定されます。技術的には、海外仕様の単心光ファイバを用いた光ファイバケーブルの心線接続・配線施工と、LANケーブルなどの各種メタルケーブルの成端・配線施工に大きく区分されます。

 「情報ネットワーク施工」競技は、情報ネットワークの基礎知識、構内ケーブル配線、マルチメディア配線ソリューション、光ファイバケーブル配線などの課題に基づき、LANの設計や施工技能、光ファイバの施工や測定技能などを、4日間で22時間に及ぶ競技時間で競う「1人施工」競技です(表2参照)。精神力・技術力・体力が要求されます。

 さらに、競技課題の内容が競技の当日に一部変更されます。また、課題内容が事前には公開されずに当日公表される「非公開課題」があります。国際大会ですので、課題の内容を英語で記述した文書が配布されます。このような課題の変更や公表された新たな課題への対応力が問われます。与えられた課題を速やかに理解し、自ら考えて、対応し、施工する能力「考える技能」が必要とされる競技です。

 時として、日本では当たり前と思われがちな作業台や工具等の工夫など「施工上の創意工夫」が、一部アンフェアであるとみなされ、競技中にその使用が禁止されることなどもあります。急な状況変化にも動じない強い精神力が要求されます。

表2 情報ネットワーク施工競技内容(4日間競技、競技時間 22時間)

【課題1】構内ケーブル配線施工
【2日間 計 12時間30分】
ビル構内などでの光ファイバケーブルおよびLANケーブルなど各種メタルケーブルの成端・配線施工を模擬した競技。
次の2つの競技から構成される。
①「19インチラックの光配線施工」競技
地下用光クロージャ取付け、地下用光クロージャから19インチラックまでの光ファイバケーブル配線、光ファイバ心線接続などの光配線施工を行う。
②「ラック間のメタル・LANケーブル配線施工」競技
19インチラック間等のLANケーブルなど各種メタルケーブルの成端・配線施工を行う。
【課題2】光ファイバケーブル接続
【計 2時間】
地下用光クロージャに48Loose単心光ファイバケーブルの取付け、光ファイバ心線の融着接続の早さと品質を競う施工競技。
【課題3】マルチメディア配線施工
【2日間 計 5時間】
戸建て住宅内での各種ケーブルの配線施工を模擬した競技。住宅の壁への配管、接続BOX、アウトレットなど取付けと、インドア光ケーブル、同軸ケーブル、ツイストペアケーブルの配線施工を行う。
【課題4】非公開課題
【計 2時間30分】
競技課題は公開・当日公表
競技開始前に提示された課題内容を理解して施工を行う競技。

2.山口選手。重圧はねのけ、4日間の競技を制す

3.「練習の成果を存分に発揮できました」

 技能五輪国内大会で2連覇を達成した山口選手(協和エクシオ)は、国際大会での金メダルが有望視されていました。しかし、世界で選び技かれた選手たちを相手に競技をするには、集中力の持続が必要でした。「もちろん、プレッシャーはありましたが、今まで積み重ねてきたことを発揮できれば勝てる、と考えていました」(山口選手談)

 結果、最終日の「マルチメディア配線施工」まで、課題を順調にこなし、圧倒的な技術の高さを証明して金メダルを獲得しました。「22歳以下という年齢制限があるので、今回が最初で最後の挑戦でしたが、日頃の練習の成果を十分に発揮できました。そして、日本の『技術の高さ』を十分にアピールできたと思っています。佐川所長や技術指導の中山さんたちの教えを守って練習してきた成果が現れたと思っています」(山口選手談)

 競技中は、多数の選手関係者が応援に駆けつけるだけでなく、教師に引率された大勢の小中学校の児童・生徒も競技見学に訪れ、ひたむきに競技に取り組む選手の姿を目の当たりにしました。競技を通じて、子供たちに「ものづくりのすばらしさ」を直に伝えた瞬間でした。

4.慌てず、焦らず、確実に競技に取り組む

(1)山口選手

②茂呂選手

5.高い技術力に各国からも絶賛の声

「ピーッ!」という審査員の笛が競技会場に鳴り響きました。いよいよ4日間にわたる競技の始まりです。山□選手(協和エクシオ)は気負うこともなく、落ち着いて課題のケーブルを手に取りました。しかし、わずかその2時間後、午前中の競技時間が終了するころには、技術の高さ、スピードの違いがはっきりと現れたようです。「追いついてくるのは、茂呂選手(日本コムシス)だけだ」そんな声が飛び交います。

大会2日目、3日目には、体調を崩し、病院に行ったり、ホテルで休憩する選手も出てきました。相当のプレッシャーがあったのでしょう。その中でも、練習と同じように課題をこなしていく日本代表の山□選手の周りは、いつも大勢の見学者が取り巻き、ビデオカメラを片手に熱心に撮影する各国のコーチの姿も見られました。

山口選手は、大会3日目の光ファイバ接続競技では、1時間に71本の光ファイバ心線接続をこなし、他を寄せ付けない出来ばえです。最終日の4日目は、規定課題に加え選択課題をこなし、余裕を持って予定時間の約30分前に終了しました。